公認心理師のキャリア形成とは何から考えたらいいのでしょうか。
転職を繰り返した私の見解を述べていきます。

領域と対象を選ぶ
教育・医療・福祉・産業・司法と大きく5つの領域に分かれています。領域と対象とする世代とを表にしました。
公認心理師の働く領域と世代別対象の表
教育 | 医療 | 福祉 | 産業 | 司法 | |
未就学児 | △ | 〇 | 〇 | ― | ― |
児童 | 〇 | 〇 | 〇 | ― | △ |
成人 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
高齢者 | ― | 〇 | 〇 | △ | 〇 |
―は対象外 △時折対象 〇対象
ざっくりとしていますが、この表からもわかる通り、人のすべての発達段階を網羅的できるのは医療領域です。福祉も網羅していますが、制度上、世代ごとの支援であり交わることがありません。
どこからキャリアを積み始めるか悩んでいる公認心理師は精神科病院でキャリアを積み始めるのがいいでしょう。
どの領域で働くにしても精神医学、薬の知識が必ず役に立ちます。また、世代別に抱える困難、保護者が抱えやすい悩みがわかってきます。
統合失調症を患う方を例にして、考えます。
A君14歳、不登校で通院した、その後統合失調症とわかる。
Bさん22歳、入退院を繰り返していたけど薬があって症状が落ち着き、就労を視野にいれた。
Cさん40歳、グループホームに入所しながら就労支援施設に通っていたが、突然不穏になり入院となる。
Dさん60歳、ずっと引きこもりだったが、保護者が介護施設に入院し、初めて一人暮らしを経験する。
このように、様々な事情を持つ患者さんの人生が、勤務数年のうちに押し寄せて、どんな人生があるか少し想像できるようになります。また、この時々の苦悩する人に寄り添うことで必要なことも想像できます。例えばDさんであれば、洗濯や調理の仕方について話したり、やって見せて教える必要があるでしょう。
医療以外の領域に転職したら
医療以外の領域に転職した際、医療につなげるべきかの判断が求められます。その時、症状と本人の困り感から推測し、即答できなければいけません。DSM-5と今日の治療薬、そして経験があなたの味方です。精神科領域での経験なく、他領域で働く場合も下記の2冊は必携です。
判断に迷う場合は「様子を見る」事は避け、「わからない」と正直に言う方が支援者のためになります。
私は治療できる病気を持ちながら、「様子を見よう」と言われ続けて大きくなった成人をサポートしています。相談者のために医療につなげるべき例が多数あり、悔やまれます。
他領域から医療分野
広い視野が求められる総合病院や、緩和医療分野では社会経験が求められるでしょう。
精神科病院に勤務する場合は、新卒求人が好まれる傾向にあります。看護師、作業療法士などの施設基準に深く関わる資格は中途採用が普通ですが、臨床心理技術者はそうではありません。
中途採用されるケースは、検査慣れしている事。精神科では心理検査が主な業務になりますから、即戦力になれる方は採用されるでしょう。
他領域から精神科勤務を希望するなら、検査ができることをアピールしてください。実際には経験が無くても、マニュアルを見れば誰にでも取れるので大丈夫です。
公務員
皆さんあこがれの心理職に公務員がありますね。
国立病院に採用された場合、国家公務員として勤務し、よほどのことが無い限り転勤はありません。
県職員として採用された場合、県立病院、児童相談所、時に事務職員としての業務を担い、実は希望のキャリアをつけにくいところが難点です。
特にキャリアを意識せず、育児と両立しやすい職場としては最高、やはり憧れの公務員ですね。